か が み


まだまだ終われない
あの人への手紙

 あなたがこの世を去ってから、もう随分と月日が流れていきました。相変わらず皆とのんきに馬鹿なことをしている俺は、それでも時々あなたのことを思い出します。
 俺はあなたの理想を拒み、粉々に砕いてしまいました。そこには理由だってありましたが、そんなことはあなたにとっては言い訳にしか聞こえませんよね。だから、俺は何も言いません。そうして黙っていようと思ったけれど、あなたは本当に物知りで賢いから、俺の考えていたことを優しく包み込むかのような手紙を書いてくださりました。それを読んだとき、俺は、ああやっぱりあなたは凄いと感じました。
 凄い、というのは、単にあなたが博学であり、人の心の内を読み取る力に長けているとかそういうことではなくて、あなたの一族に対する想いや、世界に対する慈しみが凄いということです。普通の人間、特に俺の生きる世界での一般人の中には、あなたほどの想いを抱いた人間はきっといないでしょう。俺も同じだったんです、あなたに全てを言われるまでは。社会の中で盲目になり、ひたすらに利便だけを求め続け、人を踏みにじっては這い上がり、頂上に立つと衰退の恐怖に震える。俺たち人間はそんな生き物なんです。そして俺は、それを知っていながら、見て見ぬふりばかりを続けていたんです。
 あなたに会えてよかったと言えば、あなたは笑うかもしれません。可笑しなことを言うと思うかもしれません。しかし、一つだけ知りたいことがあります。あなたは、俺たちと少しの間だけ共に過ごしたことがありましたよね。その時、あなたはいつも笑っていた。決して作り上げた微笑みではなく、本当に腹の底からの表情を見せてくれていた。今となってはもう分からないことですが、あなたはあの頃、本気で俺たちと接してくれていた――そう思ってもいいのでしょうか。勝手な推測ですが、あの時の笑顔は、本当に本物のようにしか見えなかったんです。だから、俺は。
 存在理由について、あなたから教えられたことについて、俺なりの答えを探してみました。いろんな答えが見つかりました。あなたの意見を肯定するもの、否定するもの。その中から一つだけ選べと言われても、とても難しくて選ぶことができませんでした。だけど本当は、俺は、あなたの本音が聞けたことが何よりも嬉しかったんです。あの戦いの前に書いた言葉だと意識すると、あなたの涙の意味も、あなたの言葉の数々も、あなたの憤りの根底も、何もかもが俺の中で大切なものとなり、未来永劫の宝物となっていきました。あなたの姿が遠い過去のものとなったとして、俺は決してあなたのことを忘れないでしょう。きっと覚えていると約束します。あなたの存在は無駄ではなかったと、あなたの価値は俺たちの中にあるんだと、そう訴えられるように。
 だから、どうか。
 俺たちの創っていく未来を信じ、見守っていてください。

  あなたの言葉を受け止めた者
  川崎樹


これは拍手ネタでした。しかし結局使うことなく放置。
いいえ、手紙に手紙で返すってことをやってみたかったんです。

2008/09/18 00:28 | コメント(0)






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